骨上げが無事に終わり、火葬場から戻ってきた後に行われる会食を「精進落とし(しょうじんおとし)」あるいは「精進上げ」と言いますが、これは単なる打ち上げや食事会ではなく、一連の葬儀儀礼を締めくくる重要な意味を持っています。本来、精進落としとは、四十九日の忌明け(満中陰)まで肉や魚を断つ「精進料理」を食べていた遺族が、忌明け後に通常の食事に戻す際の儀式を指していましたが、現代では葬儀当日に初七日法要まで繰り上げて行うことが一般的になったため、火葬後の食事の席がその役割を担うようになりました。この席には、僧侶や世話役、親族を招き、喪主が感謝の言葉を述べ、お酒や料理を振る舞うことで、葬儀の労をねぎらうとともに、死の穢れを祓い、日常の世界へと戻るための区切り(直会:なおらい)をつける目的があります。骨上げという、死を直接的に感じる辛い儀式を終えた直後であるため、温かい食事を囲み、故人の思い出話をしながら笑い合うことは、緊張していた遺族の心を解きほぐし、生きる力を取り戻すためのグリーフケアの時間としても機能しています。マナーとしては、遺族は下座(末席)に座って接待役に徹し、参列者に十分な食事とお酒が行き渡るように配慮しますが、あまり長引かせずに一時間から一時間半程度でお開きにするのがスマートです。また、地域によっては「骨噛み(こつかみ)」といって、精進落としの席で骨上げした骨の一部を食べる(またはお酒に入れて飲む)という風習が残っているところもありますが、これは故人と一体化したいという究極の愛情表現であり、無理に行う必要はありません。精進落としの「いただきます」の声と共に、葬儀という非日常の時間は終わりを告げ、残された人々の新しい生活が始まっていくのです。