葬儀の見積書には記載されていないものの、当日に現金で用意しなければならない出費の一つに「心付け(こころづけ)」がありますが、これは海外のチップのようなもので、葬儀でお世話になったスタッフに対して感謝の気持ちとして渡す金銭のことを指します。かつて自宅葬が主流だった時代には、近所の手伝いの人々や霊柩車の運転手、火葬場の職員などに心付けを渡すことが常識とされていましたが、葬儀社主導の斎場葬が一般的になった現代においては、その必要性は薄れつつあり、むしろ「心付け辞退」を明言する葬儀社や公営斎場が増えています。特に公務員である公営火葬場の職員に対して心付けを渡すことは賄賂にあたる可能性があるため、厳格に禁止されているケースがほとんどであり、無理に渡そうとするとかえって迷惑をかけてしまうこともあります。しかし、民営の火葬場や、地域によっては依然として心付けの習慣が根強く残っている場合もあり、また霊柩車の運転手(特にハイヤー会社からの派遣の場合)や、配膳スタッフなどに対しては、労いの意味を込めて渡すことがマナーとされる場面もゼロではありません。必要かどうかの判断基準は、「地域の慣習」と「葬儀社の方針」に大きく依存するため、事前の打ち合わせで担当者に「心付けは必要ですか?」「どれくらい用意すれば良いですか?」とはっきりと確認することが最も確実な方法です。もし「一切不要です」と言われたなら、言葉通りに受け取って問題ありませんが、「お気持ちで」と言われた場合や、運転手さんには渡す習慣があると言われた場合は、ポチ袋に数千円を入れて用意しておくのが大人のスマートな対応と言えるでしょう。心付けは義務ではなく、あくまで「感謝の表現」ですので、渡さなかったからといってサービスの手を抜かれることはありませんが、渡すことで相手のモチベーションが上がり、より丁寧な対応をしてもらえるという潤滑油のような効果があることも否定できません。